遺留分と生前贈与に関するQ&A
生前贈与とは何ですか?
「生前贈与」は、亡くなった方が、ご生前の間に行った贈与のことをいいます。
贈与は「財産を譲ること」を指しますが、ここで言う「財産」は、お金だけに限られるわけではありません。
例えば、宝石や貴金属といった宝飾品、土地や建物などの不動産、また株式など、ほとんどの財産が贈与の対象になります。
お世話になっている長女に生前贈与をしたいのですが、遺留分の問題が生じることはありますか?
他の相続人とのバランスが取れていない場合、遺留分の問題が生じる可能性があります。
例えば、長女に100万円を生前贈与したとしても、亡くなった時に遺産が2000万円あり、各相続人に平等に遺産を渡す場合は、遺留分の問題は発生しません。
しかし、長女に3000万円を生前贈与しており、亡くなった時の遺産が200万円しかなかったような場合は、長女が受け取る額が他の相続人よりも大幅に多くなり、受け取る遺産のバランスが取れていないことになります。
このようなケースでは、遺留分が発生する可能性が高いといえます。
かなり前に生前贈与を行いましたが、遺留分の問題は発生しますか?
原則として、生前贈与が遺留分に影響を与えるのは、相続開始前の1年以内になされた贈与だけです。
その期間より前になされた生前贈与は遺留分の計算に影響を与えないということから、遺留分の問題が発生しないケースもあります。
ただし、2つの例外があります。
1つは、遺留分の侵害が発生することを知って行った贈与は、相続開始より1年以上前になされた贈与も、遺留分の計算に影響を及ぼすことです。
もっともこの場合は、贈与をした方だけでなく、贈与を受けた方も、遺留分の侵害が発生することを認識している必要があります。
もう1つは、相続人に対して行われる生前贈与です。
相続人に対する生前贈与は、相続開始前の10年以内になされた贈与について、遺留分の計算で考慮される可能性があります。
なぜ相続人に対する生前贈与だけ特別な扱いなのですか?
相続人同士の平等を図るためです。
多額の生前贈与は、遺産の一部を先に渡しておくことに近い性質があります。
そのため、特定の相続人にだけ多額の生前贈与を行えば、結局は生前贈与を受けた相続人だけが遺産を多く受け取る結果になり、遺留分の制度を設けた意味がなくなってしまいます。
先の例のように、長女が多額の生前贈与を受け取っていたとすると、他の相続人の立場からすると不公平に感じ、不満を抱くことになります。
そのような背景から、相続人に対する生前贈与は、相続開始前10年前のものまで、遺留分に影響を与える可能性があるのです。
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