遺言がある場合の相続の進め方
1 遺言執行者がいる場合の相続の進め方
遺言執行者がいる場合には、相続人全員に就任通知を通知したうえで遺言書の開示を行い、遺産目録を遅滞なく作成し、相続人全員に開示したうえで、遺言に基づいた相続手続を行い、その旨を通知することとなります。
2 遺言執行者がいない場合の相続の進め方
遺言執行者がいない場合であっても、一般的には遺言書の開示→目録の作成→相続手続という流れで進めることが多いです。
ただし、遺言執行者がいない場合には、目録開示の義務等がないため、紛争性が高い案件等については遺言書の開示や目録の作成、開示がされておらず、遺言に基づく手続のみが行われているケースも散見されます。
特に公正証書遺言は、検認が必要な自筆証書遺言と異なり、相続人に対し中身を開示せず手続を行うことができるため、そのような状況が生じやすいです。
3 遺留分を侵害している場合の手続
遺留分を侵害している場合においては、通常、目録開示後から遺留分につき協議が行われます。
一般的には、解決に時間がかかることが多いため、相続手続や、相続税申告が全て完了した後、遺留分侵害額が確定し、その後、相続税の修正、更正の請求をすることになります。
また、早期に遺留分の解決ができるケースにおいては、相続税申告期限までに相続人全員の合意で遺言を無効にしつつ、遺留分侵害額を考慮した遺産分割を行うこともあります。
この方法のメリットとして、不動産の割り振りなど、遺留分侵害額請求では調整できない不動産等による調整が容易であるという点があります。
なお、遺留分侵害額請求の短期消滅時効は1年であり、これは遺言書の内容を確認し、遺留分侵害を知ってから1年ですが、上述したように、相続手続だけ行い、相続人に遺言や目録の開示をしていないケースでは、いつまでも短期消滅時効の起算日が来ず、法律関係が確定しないという問題点があります。
そのような場合には、相続の開始から10年という通常の時効が適用されることとなります。
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