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遺留分の計算の仕方

  • 文責:所長 弁護士 白方太郎
  • 最終更新日:2024年10月29日

1 遺留分の計算の流れ

遺留分権利者の遺留分を計算するには、まず遺留分算定の基礎となる財産の評価額を計算します。

遺留分算定の基礎となる財産に対して、各遺留分権利者が有する遺留分割合を掛け合わせることで、各遺留分権利者が請求することができる遺留分を計算することができます。

各遺留分権利者が有する遺留分割合(個別的遺留分)は、総体的遺留分として定められた割合に、法定相続割合を掛け合わせることで算定されます。

以下、具体的に説明します。

2 遺留分算定の基礎となる財産の評価額の計算

遺留分算定の基礎となる財産は、以下のようにして計算することができます。

まず、被相続人が相続開始時点で有していた財産の評価額を計算します。

そして、被相続人が相続開始時点で有していた財産の評価額に、生前贈与をした財産の評価額を加えたうえで、相続債務を差し引きます。

なお、生前贈与した財産には、次のものが含まれます。

①相続開始時(被相続人死亡時)からさかのぼって1年以内に贈与された財産

②1年以上前の贈与のうち、被相続人と贈与を受けた人の両方が、その贈与によって相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合の当該財産

③不相当な対価で有償処分された財産であり、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってされたもの

④相続開始前の10年間に婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として相続人に贈与された財産

どこまでの生前贈与が遺留分算定の基礎となる財産に含まれるかどうかは、遺留分を請求する際によく争われる問題の一つです。

他にも遺留分を請求する際によく争われるポイントについて解説しているページもありますので、参考にご覧ください。

また、被相続人に相続債務がある場合、その全額を差し引くことができます。

具体的には、ローンなどの被相続人の借金や、クレジットカードの立替金、死亡前に入院していた際の医療費などの未払金が考えられます。

3 総体的遺留分として定められた割合

総体的遺留分は、遺留分権利者全員に対して保障されている遺留分の割合の合計です。

具体的には以下の通りです。

直系尊属(父母や祖父母など)のみが相続人である場合には、総体的遺留分は3分の1です。

上記以外は、総体的遺留分は2分の1です。

遺留分権利者が1名である場合には、総体的遺留分がそのまま当該遺留分権利者の遺留分となります。

なお、亡くなられた方の兄弟姉妹には遺留分はありません。

4 各遺留分権利者が有する遺留分割合(個別的遺留分)

個別的遺留分は、最終的に個別の相続人に割り当てられる遺留分の割合です。

遺留分を請求できる権利を持つ相続人が複数いる場合には、遺留分侵害額請求等の前提として、各相続人が有する個別的遺留分の計算が必要になります。

個別的遺留分の割合は、上記3で算定した総体的遺留分に、各相続人の法定相続割合を掛け合わせることで算定することができます。

被相続人に配偶者と子2人がいる場合を例として、各遺留分権利者の個別的遺留分を計算してみます。

まず、相続人は直系尊属ではないので、総体的遺留分は2分の1となります。

これが遺留分権利者全員に割り当てられた遺留分割合の合計となります。

次に、各遺留分権利者の個別的遺留分を計算します。

まず、配偶者の法定相続割合は2分の1なので、配偶者の個別的遺留分の割合は、総体的遺留分2分の1に法定相続割合2分の1を掛け合わせ、4分の1となります。

次に、2人の子の法定相続割合はそれぞれ4分の1なので、子の個別的遺留分の割合は、総体的遺留分2分の1に法定相続割合4分の1を掛け合わせ、それぞれ8分の1になります。

5 遺留分の請求をお考えの方

遺言を用いることで、遺言者は、自身の意思で死後に財産を取得させる相手を決めることができます。

もっとも、遺産には相続人の生活の保障などの機能もあることから、遺言者の自由意思に制限を設け、一定の相続人に対しては、遺留分という最低限取得することができる遺産が確保されています。

遺言によって、特定の人だけが財産を取得するあるいは大部分を取得するという場合には、遺留分が侵害されているおそれがあり、遺留分権利者はご自分の遺留分について請求をすることができます。

どのくらいの金額が請求できるのかについては、上記で説明したとおり、複雑な計算方法となりますので、相続に詳しい弁護士へご相談ください。

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