不動産の相続手続きが必要な理由
1 不動産の相続手続きをしないまま放置するリスク
⑴ 遺産分割協議をしないでいると次の相続が発生する可能性がある
不動産の相続手続きを進めるにあたり、まずは誰がその不動産を取得するのかを決めることになります。
しかし、遺産分割協議をせずに放置してしまうと、いつの間にか相続人が亡くなって新たな相続が発生してしまうことにより相続人の数が増え、その結果、協議自体が困難となってしまうケースがあります。
場合によっては、相続人が20人、30人と膨れ上がってしまうこともありえます。
⑵ 相続人の数が増えるとどうなるか
そのような状態となると、いざ不動産の相続手続きを進めたいと思っても、全員から合意を得ることが難しくなってしまうことがあります。
また、相続人の数が増えてしまうと、その分解決するためにかかる時間やコストも増大してしまいます。
不動産の相続手続きについては、新たな相続が発生し、相続人の数が増えてしまったりする前に、解決を図ることが重要です。
特に、不動産の売却を考えている場合、当然相続人全員での遺産分割協議が成立している必要がありますが、相続人が増大してしまうと、全員から売却の同意を得ることは容易ではなくなり、売却自体をあきらめることにもなりかねません。
2 相続手続きを行うことで、相続税の特例が使える
居住用宅地の特例や貸家建付地の特例など、相続税の特例は、すべて「誰が」相続をしたかにより使用できるかできないかが決まる特例です。
そのため、遺産分割協議が完了するまでは、それらの特例を使用することができません。
特に不動産の評価額は高額になりがちなため、これらの特例が使用できなくなると、相続税の負担を軽減することができず、高額な相続税を支払わなければならなくなることもあります。
そのため、まずは遺産分割協議により、誰が不動産を相続するかを決める必要があります。
このように、税金の面でも、不動産の相続手続きを行わないことによるリスクがあるといえます。
なお、万が一、相続税の申告期限までに分割方法が決まらない場合には、「3年以内の分割見込み書」を提出することで3年間期限を延長することができます。
3年が経過してもなお分割が完了していない場合には、遺産分割が完了していないことにつき、止むを得ないことの承認書が受理されれば、遺産分割が完了した際に特例を使うことができますが、承認されるためには遺産分割調停等の法的手続き等、解決に向けた動きを取っていることが条件となりますので、ハードルは高いです。
遺産分割協議がまとまらない場合に、これらの手続きを行わないまま放置してしまうと、小規模宅地の特例が使えなくなってしまいます。
3 相続登記を行わないことによるリスク
⑴ 相続登記を行わないと過料が科されることがある
不動産を誰が取得するかが決まったら、できるだけお早めに相続登記を行ってください。
令和6年4月1日以降、相続登記が義務化され、正当な理由がないにもかかわらず期限内に登記をしなかった場合には、過料が科されることがあります。
⑵ 正しくない登記のまま放置するリスク
相続登記を行わずに放置していると、登記の情報を誤信した第三者が登記を信じて売買してしまったり、保全登記たる相続登記の状態で売買がなされたりするリスクが存在します。
登記は公開されている情報ですので、可能な限り、真実に即した状態を維持することが望ましいです。
被相続人が住所変更をしていた場合の相続登記 相続登記をする際の流れ